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アジアの織物 PANDAN TREE blog

~アジアのことから身近なことまで、きままブログ~
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織物の中のモチーフ【蠍(さそり)】

寒さ厳しい日が続いておりますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
1~2月を凌げば春間近の暖かさが始まるかと思うと、本当に待ち遠しいですね。

さて、今回は久し振りに【織物の中のモチーフ】シリーズを。
今回のお題は「蠍(さそり)」。

東南アジアの伝統織物に蠍があしらわれる事は稀なのですが、そんな中で蠍が登場する織物があります。
それは、インドネシア・バリ島トゥガナン村でつくられるグリンシン。

グリンシン5

グリンシンと言えば、世界で三ヵ所でしかつくられていない経緯絣(ダブル・イカット)の一つとして知られておりますが、その中のルーベン(Lubeng)と呼称されるグリンシンに蠍が登場します。

グリンシン3

下の画像のルーベン柄グリンシンは胸に掛けたりといった用途の細身の物のため、十字のうちの二方向が途中までとなりますが、壁で囲まれたような四角の部分がトゥガナン村を表し、そして村を守るように四方の門の前に蠍があしらわれております。

グリンシン4

このルーベンは男性の力強さを表し、トゥガナンを象徴する柄と伝えられます。

そんなグリンシンですが、昨年久し振りに仕入れを行わせて頂きましたので、春頃に当サイトでご紹介できればと準備を始めております。

実はグリンシンの仕入れにはちょっと躊躇というか悩む部分があり(・・・とは言っても悪い意味での躊躇・悩みではないのですが、宜しかったらこちらの記事の後半をお読み下さい)、10年近く振りの訪問、且つサイトでのご紹介までちょっと時間を置いてみました。

因みに、これまで4度トゥガナンを訪れておりますが、またまたまた・・・と、今回もまたもう一つのトゥガナン(Tenganan dauh tukad)に誘導されてしまいました(+_+)。
(詳しくはこちらの記事をどうぞ。)

いや~、目指す方のトゥガナン(Tenganan Pegringsingan)に真っ直ぐ向かえたのがこれまでで、たった1回(^^;。

トゥガナン村

勝率2割5分ってどうなんでしょう~?・・・な感じですが、この3回誘導されてしまった西側のもう一つのトゥガナンに着いて、
「なるほど~!」
と腑に落ちました。

道の途中の『トゥガナン村はこちら』的な看板も立派になった模様で、
「あれ?道でも新しくしたのかな?」
と思わせてくれるし・・・(←もちろん、私の早とちり)。
そして、村の入り口に到着すると見上げる程の大きな「ムカレカレ(トゥガナンのお祭り)」の戦いの写真を載せた大きな看板が。
そんなこんなで、西側のトゥガナン(Tenganan dauh tukad)は、観光客の誘致に益々力を入れている様子です。

個人的にはグリンシンの仕入れの為に訪問しているので、本筋のTenganan Pegringsinganの方へ直で向かってもらいたいのですが(^^;、この西側のTenganan dauh tukadもトゥガナンですし、Tenganan Pegringsinganよりも喉かで村人がガイドさんとして案内してくれますので、お時間があった際は訪れてみて下さい。

閑話休題

今回は織り手さんのワーク・ショップに半日お邪魔して、色々と目から鱗のお話しや、グリンシンにまつわる長年の謎、織り手さんなりのジレンマなども聞かせて頂きましたが、こうした様々なお話しを真っ直ぐ直球で伺えたことで、また再度グリンシンを取り扱おうという気持ちに整いました。

その中で、織り手の方にサンプルとして託された1枚がこちらのグリンシン。

グリンシン1

このグリンシンを見て、皆さんどう思われますか?

こちらのグリンシンは、染織を始めて間もない女性の、言わば修行の初期段階でつくられた物。
お客さん(観光客)の目に触れて希望があれば、
「こうしたグリンシンでも気にいってくれたのならば・・・。」
と、村では販売しているようですが、
「こうした段階の品を海外で法外な高額で販売されているのは、どうしても我慢できない。」
と悲しそうな顔でおっしゃっておりました。

グリンシンと言えば「聖なる織物」とも言われますが、そうした点に焦点が当てられ過ぎて商売に悪用された例とでも言いましょうか・・・。

これをあなたにあげるから、そうした点も含めた全てを日本で紹介して欲しい・・・と。

そして、
「もちろん、これは絶対販売しないでね。」
と、お茶目な笑顔を見せてくれました。

スマホの普及で、自分の村で作られた品、そして自分の生み出した品が海外でどのように販売されているのか簡単に知る事が出来るようになった現在。

そうした海外のお店をネットで見ながら、一生懸命つくったグリンシンが逆に安価過ぎる価格で販売されている場合や、間違って紹介されている事を見掛けたりもするそうで、そうした点もジレンマなのだとか。

ここら辺が、冒頭書かせて頂いたグリンシンを扱い続けるべきかどうしようか長年悩んでいた部分にも通じる事柄のような気がします。
「正しい形でグリンシンを紹介するには、どうすればいいのだろう・・・。」
と。

今回、色々なお話しを直球で伺って、織り手さん達の思いを汲んで、物と共に織り手さんの真っ直ぐな心も一緒にお届けできるように正しく紹介する事が、微力ながら私が今出来る事なのかな・・・と。

そんな訳で、今回のグリンシンのご紹介のために、雨で観光客も少なかったトゥガナンの織り名人の一軒で、私が長年「?」と感じていた事柄を、まずは色々と質問させて頂きました。

例えば・・・、

①象の文様のグリンシンはいにしえからの物ではなく、パトラから取り入れた比較的新しい物。
②フリンジが切り離されたグリンシンは神聖なパワーが無くなっていると言われるが、殆ど変らない(この点はグリンシンについての記述で色々と検索してみて下さい)
③藍染め一色のグリンシンは海外からの要望で作っているもので、本来のグリンシンの彩りではない。
(この下の画像の左端のような藍染めグリンシン↓)

藍染めのグリンシン

グリンシンの中には、いにしえにインドのパトラから影響を受けて何百年も前からあしらわれるようになった歴史ある文様もありますが、この①のグリンシンの象の文様に関しては、いにしえからの歴史的文様ではないとの事。
グリンシンに登場する神や人も含めた生物系の文様も何種かありますが、最近、各ワークショップで見掛ける機会が急に増えたので、
「グリンシンに象の文様ってあったかな?もしかして、今は廃れた文様の中に象があって復興したのかな?」
と謎だった次第。

特に②に関しては、グリンシンの稀な織り技法だけではなく神聖さに魅かれる方も多いので、実はずっと気になっていた事柄。
曰く、
『グリンシンが持つパワーは、使い始める際に儀式を経てフリンジ(の輪の部分)を切り離すことによって持ち主にパワーが流れ移り、切り離した後のグリンシンにパワーは残っていない』
・・・と。
ですので質問してみたところ、
「それは大げさな事が広まっているんですね・・・(^^;。グリンシンの持つ神聖なパワーが変わってしまうとかはありませんよ(^-^)。」
と、嫋やかに微笑んでくれました。
胸や腰に巻く際はフリンジを切り離して使用しますが、フリンジを切る際の所作などから上のような話しが広まったのでは・・・と。
要は用途によってそのまま使ったり、切り離したりといった事のようです。
そうですよね、そうしたら切り離さずに使用している村人にはグリンシンのパワーは無関係って事になってしまいますもんね(^^;。

因みに、今回仕入れをしてきたグリンシンの半分以上はフリンジは輪状のままですが、フリンジが切り離されている物とお値段は村でも一緒で、特には“フリンジが切り離されていない物は貴重”といった区別などはされていない様子です。

そして③に関して。
グリンシンには黒(茜と藍の重ね染めによる黒~コゲ茶)・赤(茜染め)・白(キャンドルナッツによる生成り~淡い黄)の三色が使用されますが、それぞれにグリンシンの歴史に則った意味合いがあると伝えられております。
コゲ茶&白~淡い黄の二色ベースでつくられる文様の物もありますが、多くは上記の三色での構成となります。
そこに、前から見掛けてはいたものの、謎の藍染めのグリンシンの存在。
「藍一色のグリンシンがありますが、藍色にはどういう意味合いがあるのですか?」
と質問した所、上記の答えとなった訳です。
元々、グリンシンでは黒の彩りは上記の様に藍と茜で重ね染めをして生み出しております。
世界中には藍染めや青の彩りがお好きな人が多いですし(私も青の彩りが大好き)、当店でも青系の織物から完売となっていく事が多いのですが、そういった好みの視点から、
「藍染めのみのグリンシンをつくって欲しい」
との要望が海外から出始めたのかな?・・・などと思った次第。

そう言えば、トゥガナン村内とその外での言い伝えの異なりというものもあるようで、トゥガナンの人々にとってインドのパトラが憧れの存在であったように、外のバリ島の人々にとっては且つてグリンシンが憧れ・畏怖の存在でした。
そんな事もあって、トゥガナン自体でのグリンシンの意味合いから離れた噂が神格化によって外で作られ広まったという事もあるようで、混在している様子です。

と、ザックリと記すとこのような概要ですが、伝統織物を探して巡っていると、日本で見かけていた巷の情報と現地での事実とのギャップに戸惑う事も多々あります。
で、
「こういうお話しを見掛けたんですけれども~・・・。」
と質問すると、そうした巷の情報が間違っていて、織り手さん本人に驚かれたり・・・(^^;。

逆に、
「いやいや、それは眉唾でしょう~(^^;。」
といった事を吹聴する人もいたり。
私の体験では、織り手さん本人よりも、旦那さんや家族など周りにいる人の方が、ちょっと誇張だったり煽り気味の言葉を掛けてきたり強引な事が多かったりしますが(^^;、一家の生活の事を考えて必死なのかもしれません。

実は、トゥガナンのワークショップの中にも、グリンシンではない他地域でつくられた量産イカットを、
「神聖なグリンシンだよ」
と言って、嘘の説明と共に観光客に膨大な価格で売りつけようとする悪い人というか商魂逞しい人がいたりもします(^^;。

現に私も、西側のトゥガナンを散策した際にとある一軒で、
「このグリンシンはどう?」
と、ウンドゥッを通常の10倍程(゜_゜)のお値段で勧められたことがありますが・・・、思わずそのお兄さん&お姉さんカップルに心の中で色々と突っ込みを入れてしまいました(^^;。

私の場合、お店や工房を訪れた冒頭に仕入れで来たとはお伝えすることはあまりないので、その最初の時間帯はその売り手さんや作り手さんの姿勢などを垣間見ることが出来る貴重な時間といった感じもあります。
色々と巡っていると染織に関わる様々な方にお会いしますが、本当に十人十色&多種多様。

そんな中で、品そのものと共に、品々に込められた歴史や情報も正確にお客様にお届けするのも大事な仕事だなぁ~・・・と改めてシミジミ。

ふぅ~・・・(;^ω^)、この本ブログを書くだけで既に2時間以上経ってしまっている程、グリンシンは真剣に向き合うと紹介が難しい織物でもあります。

煽らず諂わず正しいバランスで、皆さんにグリンシンの魅力をご覧頂ける紹介ページをじっくりと作りたいと思っておりますので、ショップ・サイトへのUPは春頃になってしまうかもしれません。
しばらくお待たせしますが、どうぞお楽しみに。

グリンシンの作成風景

グリンシン2

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