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アジアの織物 PANDAN TREE blog

~アジアのことから身近なことまで、きままブログ~
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古今のハザマ

読書の秋・芸術の秋・スポーツの秋、そして忘れてならない食欲の秋
・・・と、秋らしさも深まり様々な事に気持ちが沸き起こる今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、そんな秋の始まりですが、PANDAN TREEもこの先の仕入れについて色々と調べている最中です。

元来はインスピレーション人間なもので、日常では思い付く度に猪突猛進&芋づる気味に物事を進めていくことが多いのですが、ことお店の織物に関しては、中道の視点を保ちながら各地で綿々と培われて皆さんが守ってきた伝統を紹介し続けたい・・・と、熟考するように心掛けております。

ラオスの織物1

という訳で、数年前の情報と現在との変化に改めて気付き、色々伺ったりと芸術の秋(?)的な風情の今日この頃です。
で、そうした流れからの悩みも芋づる式に出てきた次第・・・。

言うなれば伝統と革新のハザマのジレンマ。

東南アジアの新興著しい地域の場合は、ほんの2~3年間を置いただけでも環境を含め様々な事柄がガラリと変わっている事も多く、着いてから、
「えっ(?_?)?」
と驚く機会が増えましたが、それもあって最近では訪れる前に色々と調べ直したり検討し直したりの日々。
そして、そうした変化はつくられている織物にも及ぶ事が多々あります。

この変化の波の中で、どういう織物を仕入れるか・・・、この点は脈々と続いてきた伝統が色濃く反映された織物を扱ってきた者としては、どんどん難問になってきているように個人的には感じます。

中には、とある民族の織物と巷では紹介されているものの、実は近年市場に出回っている大部分は他民族がつくるようになった織物があったり、とある民族が使用していた技法やデザインを他民族が使用し始めてきているためテイストが寄ってきている織物があったり・・・と、仕入れの際に躊躇してしまう様な民族を越えた変化なども、ふと思い出しただけでも浮かんできます。

元々が伝統の織り柄(文様)の素晴らしさや力強さに惚れて、気が付けば東南アジアの織物屋を始めていた身の上ですが、

ラオスの織物2

そんな突然村に訪れた見ず知らずの人間に、朗らかに色々と織物の事を教え伝えてくれる人々の飾らない優しさにドンドン魅かれ・・・といった感じでしょうか。
やっぱり織物をつくっている皆さんの姿を眺めていると、織物(品)だけではなく、そのつくり上げた人々の息吹や風土も感じて頂ける様に紹介したいなぁ~・・・と、シミジミ思います。

基本的にはオープン当初から、それぞれの土地に伝わる伝統的・特徴的な織り柄や彩りに魅力を感じて仕入れをしておりますが、上記のようないわゆる他の伝統の模倣といった部類程ではなくとも、時代の流れと共に、どうしても各地域の織物には風合いの変化が徐々に生じてきております。

その変化が生み出される要因の一つには、海外からの要望・影響というものがありますが、これは何も近年・昨今だけの話しではなく、古代中国や大航海時代のヨーロッパなどとの貿易・交易によって生じてきた事柄でもあり、言い始めるとキリが有りませんが、織物にはそうした海外から影響を受けて織り込まれ始めた文様が思いの外多くあります。

こうした影響下で当時新たに織り込まれ始めた文様でも、現代に生きる私にとっては数千年~数百年の謂れを持った文様(模様)があしらわれた伝統の品という事になりますが、現行で変化をしつつある過渡期の織物を目の当たりにすると、なかなか戸惑ったりもします。

基本的には、彼の地に暮らす皆さんが日常好んで作り使用する風合いの織物を日本に紹介したいと考えながら運営を続けておりますが、非常に華やかな(日本の感覚では “派手過ぎる” 位の(^^;)色合わせを好む地域も多く、そうした現地の人々向けの織物の横に、日本の皆さんが好みそうな落ち着いた彩りではあるものの、様式的には革新的な織物が並んでいたりすると、
「どうしようか・・・(´・ω・`)。」
と、その場で悩みに耽る事も。

お話しを伺うと、実際に日本からの要望で新たに制作され始めた様式の織物の場合もあったりで、ではそうした品には、
「伝統の」
「いにしえからの」
といった枕詞をどこまで付けて良いのだろうか(´・ω・`)?
・・・などと、ここでまた悩みのループに耽ってしまいます。

この、日本の皆さんのお好みに合わせた仕入れも・・・と思う気持ちと、地元の人々が好む風合いもお伝えしたい・・・というハザマのジレンマ。
長年東南アジアの織物を紹介し続けていても、今もなお悩み続ける点でもあります。

現在色々と調べている地域の織物は、日本の着物とも相性の良い風合いの物。
近年、若者の和装人気が高まっている事も鑑みて、そうした視点も含めてあれやこれやと考慮中ですが、調べる程にその地域の織物の奥深さに益々魅かれており、もうちょっと北部まで足を伸ばしてみようか・・・、だったら南部にも足を伸ばしたいよね~・・・とキリがない状態に陥っております。

この先も様々な地域や時代の変化に戸惑ってしまうかもしれませんが(^^;、染織の灯が消えないよう、織り手さんの励みになるように(出来れば古布よりも)現在作られている織物をコンスタントに末永く適正に紹介し続けていきたいとシミジミ&ツラツラ思う秋の夜長でした。

最後に一言。

織り子さん達の横顔は美しい!

ラオスの織り風景1


ラオスの織り風景2

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布を飾る

清々しい新緑の季節となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、前回ご紹介させて頂いたマランガと、久し振りに登場のモン族藍染ろうけつ布のUPが終わりました。
お手軽にお使い頂けるこちらの古布。
お値段もお手頃な感じにさせて頂いておりますので、どうぞ様々にご活用下さいませ。

モン族藍染めろうけつ布

さて、GW10連休も終わり数日が経ちましたが、今一つ仕事のペースに体が戻りきれない(+_+)・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

当PANDAN TREEの場合は、GW期間中は発送業務のみお休みを頂き、ご注文は通常通りにお受けし、午前集中の半日営業のような形を取らせて頂きました。

午後はず~っとやろうやろうと思いつつ出来なかった家の模様替えに勤しむ日々で、GW終了後、
「いや~、部屋もスッキリしたし、有意義なGWだったね~♪」
とニッコニコでツレに言ったところ、片付け嫌いなのにつき合わされただけあってこんな顔→(´・ω・`)をされてしまいました・・・。
良いじゃないの、快適空間になったんだからさ・・・。

という訳で、模様替えをしながらお客様からの質問の一つがふと頭に浮かんだのですが、それは、
「織物ってどうやって使えば良いですか?」
というご質問。

実は、この種の質問を時折頂くのですが、要は、
「アジアの織物の風合いは大好きなのだけれども、自分の部屋(和洋共に)のインテリアに合うか不安。」
という、装飾などとして部屋に飾る際のお悩みのご様子。

個人的には、引き算的にアジアの織物を使って頂くと、現代の洋室や和室にもすんなりと溶け込んでくれるのではないかと思います。

アジアの織物は色彩が鮮やかであったり、文様が印象的であったり力強かったり・・・と一枚一枚個性を放つ物が多く感じられます。

ですので、一部屋に
「これもあれも・・・」
と、あまりにも多くの織物を飾ると、その一枚一枚が喧嘩をして、それぞれの折角の個性を潰し合ってしまうかもしれません。

という訳で、アジアの織物屋を運営している私ではありますが、一部屋に飾るアジア布はクッションなどの布雑貨も含めて多くても2枚(2種)といったところで、季節毎に飾る布を変えて楽しんでおります。

一枚で部屋の印象を変える事の出来る便利な装飾品といった感じで、絵などとはまた一味異なり、風がそよぐ時に見せてくれる動きのある表情もまた楽しいものです。

織物の産地で宿に泊まると、その地の織物が飾られている事も多いのですが、1~2枚を印象的に飾っている事が多く、布使いの上手さに感嘆する事も。

どうぞ、皆様も布のある生活を様々にお楽しみ下さい♪

グリンシン

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グリンシンの絣合わせ

暖かさも徐々に増してきたここ神奈川ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、先日グリンシンをPANDAN TREEサイトにUPさせて頂きましたが、今回はこのグリンシンの絣合わせについてのお話しを。

グリンシンと言えば、世界でも稀なダブル・イカット(経緯絣)。

インドネシア全体では、経糸(縦糸)を染め上げて文様を生み出す経絣のシングル・イカットが多く、緯糸(横糸)を染め上げて文様を生み出す緯絣のシングル・イカットは、バリ島のチュプッやウンドゥッ、スラウェシ島・スマトラ島・ヌサペニダ島・ロンボク島の一部地域などといった感じになります。

こうしたシングル・イカットの場合は、整経の後に織機に糸をセットした後は、トントン(個人的には、この機織りの音の記事のように“バンバンッ”と聞こえる事も多いのですが(^^;)と、刀杼を滑らすように移動させながら織り進んでいきます。
・・・が、ことグリンシンにおいてはちょっとリズムが異なります。

日本の大島紬の経緯絣などでは、絣合わせ(絣調整)の際に調整針で糸を引っ張るなどして絣文様を整えて行きますが、グリンシンの場合はちょっと一味異なる動作が加わります。

使用する道具はグリンシン版調整針といったような物で、素材は水牛の角や骨製であったり、プラスチック棒の先に金属針が付いていたりと様々。

グリンシンづくり風景

その針の様な道具で、絣合わせを行いたい部分間近の織り終えた際(きわ)の経糸を横方向にカリカリと一方に擦ると(文章にすると分かり難くなってしまいますね(^^;)、不思議と経糸がジワジワと上に上がっていき縦方向の絣合わせが成されます。
擦った振動の加減で上がっていくのでしょうか?

下の画像で言うと、ジワジワと上がってきているのは、左手で持った糸・・・ではなく、実はその右横の調整針の先があてがわれた辺りの経糸の方。
左手で持った糸は、絣合わせの際に調整針の邪魔にならないようヒョイと持ち上げたといった感じです。

グリンシンの絣合わせ

初めてその光景を拝見した時、
「おおぉ~~っ!」
と感動し、織り手さんの指先から20cm程の至近距離でしばらく観察させて頂きましたが、どうやらそこに感動する訪問者は少ないようで、織り手さんも喜んで披露してくれたりしました。

そうなんです。
日本の経緯絣同様、このグリンシンでも絣合わせは重要かつ時間のかかる作業であったりします。

冒頭のようなシングル・イカットの場合は比較的トントンと織り進みやすいのに比べ、緯糸をじっくり合わせてトンと織り、調整針で経糸をカリカリと・・・と、インドネシアの他地域に比べて非常に穏やか且つ静かな染織風景となります。

今回、グリンシンはPANDAN TREEでは久し振りのご紹介となりますが、宜しかったらどうぞ現地トゥガナン村を訪れて、穏やかな空気の流れる染織風景をご覧になってみて下さい。

PANDAN TREE グリンシンのコーナーへ>
グリンシン

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パヒクン・パヒタン・カナタン...

急に秋らしさが深まってきた今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、しばらく在庫が少なくなっていたスンバ島の浮織り布パヒクン(Pahikung)ですが、先日ようやくUPさせて頂きました。

スンバ島パヒクンコーナーへ ▸▸▸

スンバ島浮織り布パヒクン&パヒタン

スンバ島では島の染織を代表するイカット(絣)製の男性用腰衣ヒンギー(Hinggi)と共に、パヒクンと呼ばれる独特な風合いが魅力の浮織り布も盛んに作られております。

パヒクンは、女性の腰巻(サロン)を飾る装飾や肩掛け、そして男女の頭飾りなどとして使用される事が多い、ちょっと地厚めの存在感のある織物で、スンバ島イカットと同様に様々な文様が織り込まれております。

織り上げた後に経糸の文様部分を彩色する摺り込み染めが施されることが多く、文様好き&ダイナミックな織物好きの私としても大好物な織物なのですが、

スンバ島浮織り布パヒクン1

実は文様が無彩色の物も大好き(*‘∀‘)!
・・・ということで、無彩色のパヒクンも併せて仕入れして参りました。

スンバ島浮織り布パヒクン2

いかがでしょう?
同じパヒクンといっても、風合いがガラリと異なって素敵ですよね

そして併せてこちらの織物も入荷致しました。
その名もパヒタン(Pahitang)。

スンバ島浮織り布パヒタン

このパヒタンについては他店様でもネットの染織情報でも説明されている事が少ないようなので、少々ご案内を。

生まれはスンバ島北東部の村カナタン(Kanatang)。
このカナタンは、島東部の中心地ワインガプのちょっと北に位置する村で、ワインガプからドライブして北上すると道沿いにパラパラと家が見え、気が付けばアッというかアレッ?・・・という間に過ぎてしまうような、そんな集落です。

このカナタンでつくられた浮織り布がパヒタンと呼ばれ、分類的にはパヒクンの一種なのですが、パヒクン程は地厚ではなく質感的にはイカットとパヒクンの中間といった感じで、技法的には昼夜織りのような仕上がりとなります。

“パヒクン・パヒタン・カナタン・・・”
“Pahikung・Pahitang・Kanatang・・・”
・・・と、名前が似ているので、ちょっと呪文のようになってきましたね(^^;。

ここカナタンでは、このパヒタンとイカットを併用したヒンギー(男性用腰衣)などもつくられており、こちらのヒンギー↓もカナタンでつくられました。

カナタン製ヒンギー ▸▸▸
スンバ島カナタン製ヒンギー

スンバ島は面積で言うとバリ島の約2倍程ありますが、人口はほんの60万人少々と約7分の1。
そうした中で、多様な染織づくりが受け継がれている事に、心から敬服です。

スンバ島北東部

・・・と、ここでスンバ島のホテルで見掛けた気になった風景を一つ。

なぜか裏面でテーブルに飾られているパヒクン・・・。

スンバ島のホテルで見かけたパヒクン

本来こういう使い方はしないので、
ホテルの子に聞いてみたら、
「(表が)汚れちゃうから・・・。」
だそう(^^;。

そう言えば、東南アジアの手織り布って、元来はあまり洗濯しないんだよね・・・と思い出したスンバ島の夜でした。

という訳で、パヒクンのUPも終わりましたので、久し振りにオリジナル・アクセサリーの制作に入ろうかと思っております。
今回はアジアンシルバー多めで作りたい気分ですので、エスニック感が増したデザインがメインになりそうです。
寒くなるまでに完成出来れば・・・といった感じですが、どうぞお楽しみに♪

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スラウェシ島トラジャの茜染め&泥染めイカット

乾燥しがちな冬の合間の雪模様となった神奈川ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
日頃、暑い気候が大好きな人間ですが、久し振りに白く舞う雪を眺めるのも良いものですね。

さて先日、スラウェシ島トラジャの絣布をUPさせて頂きました。
スラウェシ島トラジャの茜染め&泥染めイカット1

このトラジャ・イカット。
実は、昨今では合成染料を使用してつくられる事が多くなりつつあることもあり、個人的には、
『トラジャなら天然染料で!』
の思いが強かった事も重なって、ここ10年程は仕入れを控えておりました。
・・・が、今回、天然染料による物が幾枚か仕入れできましたので、久し振りの登場となりました。

これまでは、茜染めを主体に鉤文様が浮かぶセコマンディやポリ・シトゥトゥなどと呼ばれるトラジャ・イカットをご紹介してきましたが、今回初登場なのがマリロトンと呼ばれる泥染めのお品。
スラウェシ島トラジャの茜染め&泥染めイカット2

トラジャ族の中では白と黒は天国と地球を表すと伝えられているそうで、こうした彩りの織物は地域の長が洞窟で瞑想をする際などに使われたそうです。

織物にあしらわれた文様や彩りに、秘められた言い伝えや伝統、そして人々の思いや願いが反映されている側面などが私が織物に魅かれる一因でもあるのですが、長年織物を取り扱ってきた身でも、まだまだ布の持つ奥深さに魅了されております(^-^)。

さて泥染めと言えば、日本の大島紬、マリのボゴランなどがありますが、今回のトラジャのマリロトンのように東南アジアの地域にも泥染めが行われている地域が点在しております。
私が初めて泥染めの織物に出会ったのが、東ティモールのボボナロでつくられたタイス。
東ティモール・ボボナロの泥染めイカット1

年代的には、まだ東ティモールとして正式に独立する前の2000年頃に出会った一枚(つくられたのは1960年代頃)ということで、インドネシア製と言えば良いのか・・・、東ティモール製と言えば良いのか・・・と、歴史の過渡期を経た織物。

この、現在インドネシアとの国境に近い地域となった場所でつくられる泥染めの織物は、落ち着いた風合いの中に力強さが感じられるような、非常に心惹かれる風合いを持っております。
東ティモール・ボボナロの泥染めイカット2

ティモール島の他にも泥染めが行われている場所は見られ、例えば鮮やかな彩りの中に具象的な文様が浮かぶ織物の多いスンバ島でも、普段、女性達が纏っているサロンなどには、濃い藍~黒無地といったシンプルな彩りの物もあります。
スンバ島の女性

黒を生み出す方法に関しては地域によって様々で、
『藍染めを何度も何度も繰り返し濃い色にして黒と見なす』
などの他、
『藍染め&その他の植物(・・・例えば日本人の私達にも馴染みのある植物と言うとモクマオウやネムノキ科の木など)&鉄分豊富な泥による泥染めの併用で黒を生み出す』
など、一言に黒といっても様々な素材や観点から生み出されているようです。

色と言えば、昔お店を始める前に、鮮やかな緑色(いわゆる草色ではなくブリリアントグリーン系)は天然染料では表現できないと伺った事があるのと同様に、
「黒の彩りを表現するためには何を使用しているんだろう?」
と疑問に思っていた事もありましたが、このようにそれぞれの土地に密着した素材で、黒はもちろん様々な色を生み出してきたんですね。
因みに、ボボナロの泥染めには水牛の糞を染め材料の一つとして使用する事もあるそうです。

改めて、いにしえから伝わるつくり手の女性達の技と工夫に感服です。

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